もとこの音楽感想日記

生で聴いた音楽の感想など

喜多直毅×三枝伸太郎@インエフ

デュオでのライヴは2回目。
1stセットは喜多直毅オリジナル曲。
私が一番おもしろかったのは「影絵遊び」(喜多直毅作曲)でした。
サルガヴォでのアレンジとは変えて、主旋律はほんの少ししかやらない。
いきなり、アクセントと休符の絶妙な"あの"部分から始まって、「影法師」には行かず、元に戻って終わった。
板橋区」が途中からジュンバのリズム(強い2拍子)になったのは、喜多直毅クァルテットの味が出てたのかな。
2ndセットからアンコール曲まで、意図的ではなかったようですが、全て" 死 "に関係した曲でした。
なかでも、宮沢賢治の「永訣の朝」。
岩手出身の直毅さんが東北の言葉で朗読しながら、デュオで音を奏でるのです。
何度目でしょう、また心を持って行かれてしまった。泣きそうになるの我慢しました。
特に2ndセット、ヴァイオリンの独壇場に思えたのは、私が直毅さんの奏でる音にマニアックなほど共感しているからでしょうか?
三枝さんは、演奏してどうだったのだろう。
すごく綺麗で、音楽的に高度だと思うけれど、"おしゃれ"なのだけれど。
彼の魂が私にはよく見え(聴こえ)なかったなぁ。

3月9日
喜多直毅 (ヴァイオリン、朗読)
三枝伸太郎 (ピアノ)

01. 泥の川 (喜多直毅作曲)
02. 黒いカマキリ Una Santateresa Negra (喜多直毅作曲)
03. 板橋区 (喜多直毅作曲)
04. 影絵遊び (喜多直毅作曲)
前半4曲、だんだんピアノの自由度が上がって行った気がしました。
休憩

05. La llorona ラ・ジョローナ (泣き女)
自分を捨てて去った男と再会した時、男は女を全く無視し、二人の息子達とだけ会話して又故郷に帰って行った。隣に新しい妻を乗せた馬車に乗って。女は嫉妬と怒りで、我が子二人を川に突き落とした。我に返っても、もう息子たちは戻らない。女は幽霊のように彷徨い続けたという、メキシコの泣き女伝説から生まれた歌。ヴァルガスが映画「フリーダ」の中で歌っています。
内容を読んでから演奏でした。
歌うヴァイオリン、乱れたり捻れたりしながら。
掠れた音色がまた良いのです。
06. 永訣の朝 (詩・宮沢賢治)
2011年5月、東工大での「宮沢賢治を踊る・奏でる」が直毅さんの朗読の初演でしょうか。
「うたをさがしてトリオ」のアルバムには、もう一つの「風がおもてで呼んでいる」が収録されています。
よく考えてみると、私にグッと来た力の3割くらいは賢治の詩の力です。
病気でもう死んでしまう妹への言葉、妹の言葉。
朗読しながら弾く部分もあり、朗読だけの部分もあり。
07. Alfonsina y el Mar アルフォンシーナと海 (Ariel Ramirez)
アルフォンシーナは入水自殺した詩人の名前です。
彼女のことを書いた詩の一番を読んでから演奏に入りました。
08. Bésame mucho ベサメムーチョ (Consuelo Velázquez)
有名な曲。タイトルは、もっとキスして!という意味ですが、恋人同士のキスではないのです。
死の床についているお父さんに娘が求めているキス。
アンコール;In a Sentimental Mood (Duke Ellington )
お店の本棚から直毅さんがジャズのスタンダード本を取り出し、メジャーキーの曲を選んで演奏。
それぞれのソロももちろんやって、短めに。
お二人ともジャズ中心の奏者ではないけれど、リハーサルなしでサッと曲に入れる技術はもちろんあるのです。
後からマスターが、これもエリントンがお父さんの死に際して書いた曲と教えてくれました。
毎日が誰かの誕生日で、誰かの命日、とは本当ですよね。