もとこの音楽感想日記

生で聴いた音楽の感想など

梅若研能会一月公演@国立能楽堂

1月11日
「翁(おきな)」という演目は、天下泰平、五穀豊穣を祈る神事だそうです。
都内でも各流派が1月に開催する「翁」のなかで、どれを見るか。私のポイントは勿論、笛奏者が一噌幸弘さんだということです。
今日の幸弘さん、白式尉(はくしきじょう)の面をかけた梅若万三郎さんが舞うあたりは若干音数が抑え気味で、冴えた音色が素晴らしかった。
三番叟(さんばそう。これは狂言師が舞います)は中村修一さん。ここの笛はさらに突き抜けた感じで、透き通ってましたね。舞いは、何となく洋楽のノリを感じました。
狂言の後見が石田幸雄さんと野村萬斎さんでした。翁で萬斎さんが後見やるのは珍しいかと思います。
千歳(せんざい)は、梅若志長さん、平成12年生まれ。声変わりの時期なのか、謡いは苦しそうでしたが、颯爽と舞っていました。

狂言「財宝」(さいほう、と読みます)
シテは野村万作さんで、面をかけていたので表情はわかりませんが、声が掠れることもありました。動く時は、そういう型なのでしょう、孫役の深田博治さんが後ろについて両手を差し出し、転ばぬように気遣う所作でした。でも、一度も触れてはいなかった。万作さん、凄い。
それぞれ、ひとさし舞います。
最後に同じく孫役の内藤連さんと岡聡史さんの組んだ手車に乗り謡いながら退場するのを見て、何だか暖かい涙がポロっと出ました。
高齢でもばっちり舞台に立つ万作さん、そして立派な後継者に囲まれ、栄えていく。お正月にぴったりですね。

能「屋島 /弓流し/奈須与市語」(やしま。小書が、ゆみながし、と、なすのよいちのかたり)
笛で選んだこの公演ですが、よく見ると萬斎さんが屋島のアイで奈須与市語をやる!
壇ノ浦の合戦で、平家の舟からの扇のまとを弓矢で射る有名な場面です。
ここでは、萬斎さんは3人の人物を演じ分け、もう見事な動き、勢い、語りの上手さに感嘆しました。
何年か前にも見ていますが、今日は貫禄さえ感じました。外見は、どこにいてもひと目で目立つ色白な美男子!(男子という年頃でないのは承知してますが、やっぱりかっこいい。)
万作さんの息子として生まれ、伝統を叩き込まれ、狂言以外の分野でも活躍しつつ、こんな正統派ど真ん中のアイを演じる人。
私は元々この方に惹かれて、生舞台、生演奏が好きになりました。やがて東京には様々なパフォーマンスが行われていて、その気になればその場に行けることを知りました。12,3年前になります。