もとこの音楽感想日記

生で聴いた音楽の感想など

「葵上」(久田舜一郎、大島輝久、喜多直毅、角正之)@ソノリウム 

1月22日、あの大雪の為に延期になった公演です。
今夜は『満員御礼』『当日券はありません』と告知されていました。
2016年9月に西宮市で開催された「能楽小鼓とバイオリンで紡ぐ『葵上』」(久田さんと喜多さんが出演、謡は今夜とは別の方でした)を私は見ています。それを東京でもやりましょうというのが、この公演の発端だと聞いています。
謡が私の好きな大島輝久さん(喜多流)なので期待して行ったのですが、期待以上でした!

第1部
ステージ正面奥に装束が掛けてあります。
配布されたプログラムには「小鼓・ヴァイオリン・ダンスによる即興パフォーマンス」となっていましたが、大島輝久さんも、久田さん、喜多さんと一緒に登場し、ステージ向かって右側、久田さんの左の椅子に腰掛けます。
角正之さんは、演奏が始まってから客席後方から少しずつ前進し、ステージ部分へ。上の衣装は白色で腹部が見える。下は黒色のロングスカートみたいなもの。楽器奏者二人と即興パフォーマンス。おもしろい。ここまでは、想定内でした。
後半、大島さんが包みからお面(『増(ぞう)』という種類のお面。女性です。)を取り出し、ご自分で後ろの紐を結びます。と、同時進行で角さんが初めから被っていた黒色のマスク(目隠しの布のようで、顔の4/5くらいが隠れています)を外しました。そして、大島さんが立ち上がり謡います。え?どこ?…と「葵上」の詞章を探してもみつかりません。後で、久田さんが解説なさいましたが、能「野宮」(ののみや)の冒頭部分でした。なんとも鮮やかな入れ替わり!時系列で言うと、「野宮」は「葵上」の後のストーリーなのです。第2部に対して時間を遡る構成になっていた訳ですね。しかもこの段取りは今日決めたのだと終演後に角さんから伺って、びっくりしました。能楽ってすごい、即興ってすごい。
休憩

第2部
正面奥の装束はそのまま。譜面台が3人分用意されます。中央に久田さん、右手に大島さん、左手に喜多直毅さん。
それにしても、大島さんの声に聴き惚れました。かなり前に何回か能舞台を見たことはありますが、さすが!と唸ってしまうほど。久田さんの鼓と掛け声も素晴らしい。このお二人の個性と、何百年も継承されて来た能楽の力に、喜多直毅さんは吹き飛ばされないか、ちょっとだけ心配になるほどでした。
でも、そんなことはありませんでしたね!
前回「オブリビオン」を奏でていたので、今夜はどうするのかなぁ、と思っていましたが、即興演奏でした。六条御息所の名のりの辺りで旋律(「暗い日曜日」)の断片が(私には)聞こえたり、既存曲ではないけれど、うた、だった部分もありました。ヴァイオリンからいろいろな音が生まれます。弓を振って、空を切ったり。ヴァイオリン独奏も、小鼓と一騎打ち的なやり取りも実に充実していて、おもしろかった!
このスタイルの公演ですから、アンコールは無し。少し挨拶があって終了でした。
とても良かった!
この1週間にあった辛いこと、全部どこかに消えました、はい。

3月30日
久田舜一郎 (大倉流小鼓方)
大島輝久 (喜多流シテ方)(主に謡。舞ってはいないけれど少し所作あり。)
喜多直毅 (ヴァイオリン)
角正之 (ダンス)