もとこの音楽感想日記

生で聴いた音楽の感想など

常味裕司×吉見征樹×壷井彰久×喜多直毅@インエフ

常味裕司さんがリーダーで、「この」二人のヴァイオリニストを擁するアラブ音楽セッション!もちろんこの組み合せでやるのは初めてです。


喜多さん、いつに増して狂気の人になっていました♪
「へん」かもしれませんが、私は「へん」が好きです!


二人のヴァイオリニストの関係、後半に行けば行くほどおもしろくなって行きました。


8月24日
常味裕司(ウード、レク)
吉見征樹(タブラ)
壷井彰久(ヴァイオリン)
喜多直毅(ヴァイオリン)


常味さんは、4曲目と7曲目はウードは弾かず、レク(アラブのタンバリン)を演奏されてました。
「ヴァイオリン対決」がテーマだった訳ではないけれど、4人でやって2人がヴァイオリンなら自ずと比較してしまうかな。アラブ音楽演奏歴は喜多さんの方が長いので、兄は直毅さん、彰久さんは弟でしょう。


01. Longha Farafaza ロンガ・ファラファザ (Riad Sombati作曲)
そもそも喜多さんの譜面台には別の譜面。やる前に間違いに気が付き、壷井さんの譜面を見ることに。タイトルコール無し。吉見さんが聞いても、常味さんは「やったらわかるよ」と。「『ろ』で始まる曲です」と壷井さんが曲のヒント(笑)を出してスタートしました。
音楽全体としてはいきなり面白いのですが、喜多さんの隣で同じ楽器を弾くお相手は今夜は(ファルハで共演している)西田ひろみさんではなく、壷井彰久さんなのです。
つまり、がっちり基本形を固める方と暴れまくる喜多さん、という構図にはならないし、それでは壷井さんが勿体ない。いや、これ、どうなっていくんだろうとちょっと心配にもなりました。


02. Samai Bayati セマーイ・バヤティ
喜多さん暴れる。今夜はその路線で突っ走るのか。
ヴァイオリンの「裏声」は喜多さんが格段美しいと思う。
03. バシュラフ・ラスト(トルコ古典曲)
喜多さんのタクスィーム(即興ソロ演奏)から始まります。歌うタクスィームではなくて、物語を語っているような雰囲気でした。音量の幅が豊かだなぁ!
本編は、ヴァイオリンとウードが太く単線で旋律を奏でます。
04. 「ヒジャーズで」ヴァイオリン×ヴァイオリンにタブラ、レク
詳しい説明はされませんでしたが、曲というよりも一定の旋律があって(?)、ヴァイオリニストが続けてソロをやるという事だったと思います。
壷井、喜多の順。
壷井さん、「壷井節」。壷井さんがよく弾く(と思われる)、重音とある特定の響きの和音。
喜多さん、狂った人に見えます(聞こえます)。美しいというより、狂っている。最後はペグまで回して最低音域より下げてました。
でも、喜多さんの領域としては珍しくは無かったかな。
05. Layali El Jazaier アルジェリアの夜 (Mohamed Abdelwahab作曲)
休憩


06. Samaai Nahawand セマーイ・ナフワンド (トルコの曲)
ウードタクスィームあり。
07. ヴァイオリン×ヴァイオリンにタブラ、レク
4曲目と構造は同じです。もしかしたら曲なのでしょうか?
喜多、壷井の順。
08. Kulli Da Kan leh 私の人生に起こった全てのこと (Mohamed Abdelwahab作曲)
ウードが短めに前奏的なことをやって曲に入る時、たいてい常味さんは複数の弦を奏でて響かせるのです。この音だけでヤラレてしまう事もあります。が、今夜は一番低い弦を単独で響かせてました。レバノン、シリアから帰国されて、少し感じが変わった気がします。より「太く」なったような。
端正な壷井ソロ。
喜多さんがメロディを弾く時は、ウードとタブラのバッキングはヴァイオリンに合わせてもう少し音量を下げて欲しかった。
このあたりまで進行すると、ヴァイオリン同士の噛み合せが良い感じになっていました。
あとの方で、喜多さんんが唯一真面目なMC。「今年ヴァイオリンと共演したのは2回目(ファルハ以外で)」「違う楽器とやるよりも音域、音色が似ているので気を使うことが多く、あまりやらないのです」「今日は細かい打ち合わせ無しでも二人の役割分担が出来た」というような趣旨のことをおっしゃってました。


09. Parfum de Gitane〜ジプシーの香り (Anouar Brahem作曲)
この曲にはごく短くソロをやるならやれる箇所があるんです。誰がやるか、どんなことをやるか、は勿論その場の判断です。
喜多さんが奇抜な音程でキューっと入って来ると皆さん(半分呆れて?)笑ってましたが、次にその箇所が巡って来た時に壷井さんが普通に弾いて私はつい笑ってしまいました。
壷井、常味、喜多、吉見の順に長めのソロ。最後にヴァイオリン2本とも高音域に飛んで行って、でもそれぞれ勿論違うことをしていて実に楽しかった!


アンコール;Raqsa Bayati ラクサ・バヤティ (Sayyd Muhammad作曲)
常味さんと和田啓さんのデュオアルバム「MA QABLU WA BAAD」の7曲目に収録されています。後半高速になるところが速くて速くて面白かった!!!
終わってからの店内BGMがヴォーカル曲で、「わぁ、この落差!」と喜多さんおっしゃってました。うん、ちょっとね、私もこの曲の気分ではなかったです。